賃上げ促進税制について
賃上げ促進税制とは
賃上げ促進税制は、青色申告書を提出する法人について、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。
本制度は2013年度(平成25年度)の税制改正で「所得拡大促進税制」という名称で導入されました。当時は安倍政権下での賃金引き上げ促進策の一環として、デフレ脱却と経済の好循環を目指す「アベノミクス」の重要施策の一つとして位置づけられていました。
導入以降、数度の改正を経て、企業の実態により即した制度となるよう要件や控除率が調整されてきており、2022年度税制改正の際に現在の名称に改組された制度です。
制度を利用する法人の規模によって適用要件などが変わってきます。
今回は中小企業者向けに絞って紹介します。
適用要件(中小企業者等)
中小企業向け「賃上げ促進税制」は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度になります。
ここでいう「中小企業者等」とは、青色申告書を提出する法人のうち、下記のことを指します。
〇期末の資本金または出資金の額が1億円以下である普通法人
(※大規模法人に発行済株式等(自己株式等をのぞく)の2分の1以上を所有されている法人などはのぞく)
〇資本または出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1,000人以下である法人
〇協同組合等
また、ここでいう「給与等」とは俸給・給料・賃金・歳費及び賞与並びに、これらの性質を有する給与で、退職金などについては、原則として給与等に該当しません。
具体的な適用条件は下記になります。
適用期間R6.4.1~R9.3.31までの間に開始する事業年度において
〇雇用者給与等支給額が前年度と比べて、① 1.5%以上増加していること又は② 2.5%以上増加していること
この場合、控除対象雇用者給与等支給増加額の①15%又は②30%を法人税又は所得税から控除することができます。
また、教育訓練費の額が前年度と比べて、5%以上増加していること、適用事業年度の教育訓練費の額が適用事業年度の雇用者給与等支給額の0.05%以上であることの条件を満たした場合は、税額控除率が10%上乗せになります。
さらに、適用事業年度中にくるみん認定、くるみんプラス認定若しくはえるぼし認定(2段階目以上)を取得したこと、又は適用事業年度終了の時において、プラチナくるみん認定、プラチナくるみんプラス認定若しくはプラチナえるぼし認定を取得していることの条件を満たした場合は、税額控除率を5%上乗せとなります。
(中小企業庁HPより)
適用にあたってのポイントなど
まず、本制度の適用を受けるためには法人の確定申告の際に、所定の別表が必要になります。別表6(二十四)および適用額明細書に本税制の適用を受けるための記載をしなければなりませんが、別表6に関しては毎年の改正でよく変更されるのでご注意ください。
また、適用を受けるため、事前に準備しておく根拠資料も必要となります。
正しく要件を満たすためには、根拠をしっかりと残しておく必要があります。
〇給与関係書類
給与等支給額の算定資料
・給与台帳(当期・前期)
・賃金台帳(当期・前期)
・源泉徴収簿
・給与明細書(写し)
・給与支払報告書
〇雇用者数の確認資料
・雇用保険一般被保険者数が確認できる書類
・労働者名簿
・出勤簿・タイムカード
・社会保険の標準報酬月額決定通知書
〇教育訓練費関係
・教育訓練費の支出証明
・教育訓練費の明細
・領収書・請求書
・支払伝票
・現金出納帳・預金出納帳
・研修実施記録
・受講証明書
・研修カリキュラム
・社内研修の場合は実施報告書
これらの資料は残さず作成・受領するようにしましょう。
最後に
今回は賃上げ税制についてみていきました。
実際の適用にあたっては、まず条件を満たすかどうか?ということと、実際に支給額を増加させる必要があるので、事前の検討を忘れないように税理士に相談しましょう!