企業の退職金制度について
今回は企業における退職金制度について概要を解説していきたいと思います。
〇退職金制度とは?
退職金制度の基本的な内容について、体系的に説明いたします。
そもそも退職金制度とは、従業員が退職する際に支給される一時金または年金形式の給付制度で、長期勤続への報償および退職後の生活保障を目的としています。
法的な支給義務はないが、多くの企業で任意に導入されている制度です。
支給の目的は、下記のようになります。
① 功労報償的性格
- 長年の勤務に対する感謝の意
- 企業への貢献度への評価
② 生活保障的性格
- 退職後の生活資金の確保
- 老後の経済的基盤の形成
③ 賃金後払い的性格
- 通常賃金の一部を退職時まで支払い繰り延べ
- 従業員の長期勤続を促す役割
支給形態は、一時金方式と年金方式の2パターンになります。
A. 一時金方式
- 退職時に一括で支給
- 使途が自由で柔軟な資金活用が可能
B. 年金方式
- 定期的に分割して支給
- 安定的な収入源として機能
税務上の取扱いは下記のようになります。
① 支給企業側
- 損金算入が可能
- 役員退職金は「不相当に高額」でない範囲
② 受給者側
- 退職所得として取り扱い
- 退職所得控除の適用
- 半額課税の特例適用
〇法人の退職金制度の体系
次に、法人の退職金制度について、主要なポイントを整理して説明いたします。
主な退職金制度の種類は下記の2点に分類され、メリットとデメリットも下記のようになります。
A. 社内積立型
- 自己都合要支給額を損金算入して社内留保
- 期末要支給額の全額または一定割合を計上
- メリット:資金の社内活用が可能
- デメリット:多額の退職金支給時に資金繰りが悪化するリスク
B. 外部積立型
①退職金共済
- 中小企業退職金共済(中退共)
- 特定退職金共済
- メリット:掛金の損金算入、安定的な積立
- デメリット:運用利回りが比較的低い
②生命保険を活用した制度
- 団体定期保険
- 総合福祉団体定期保険
- メリット:死亡保障付き、掛金の損金算入可
- デメリット:解約返戻金が低い場合がある
- 税務上の取扱い
A. 退職金の損金算入
- 役員退職金:「不相当に高額」でなければ損金算入可
- 従業員退職金:原則として全額損金算入可
B. 退職金の受取側の課税
- 退職所得控除の適用
- 半額課税の特例
- 相続税非課税枠(死亡退職金)
支給にあたり退職金規程を整備し、下記の内容は必ず押さえることが必要です。
- 支給対象者
- 支給要件
- 算定方法
- 支給時期
- 不支給事由
- 差別的取扱いの禁止
検討時の注意点は下記のようになります。
- 労使での十分な協議
- 経営上の必要性の説明
- 激変緩和措置の検討
- 既得権の保護
- 代替措置の提示
〇終わりに
このように、退職金制度は企業と従業員双方にとって重要な制度であり、適切な設計と運営が求められます。企業の状況や従業員のニーズに応じて、定期的な見直しと調整を行うことが推奨されます。
さらに具体的な質問や、特定の観点については税理士にご相談下さい。